小1の最初の3ヶ月で差がつくポイント

回答

小学1年生の4〜7月(最初の3ヶ月)は、つまずきの初期パターンが形成される最も重要な時期です。この期間に学ぶ「数の合成・分解」「たし算・ひき算の概念」「数の比較(どれだけ多い)」の3単元は、後の算数全体に連鎖する土台であり、どこかで理解が止まると次の単元にそのまま持ち越されます。早期に察知して対処することが、苦手意識の固定を防ぐ最短経路です。

「うちの子、算数についていけていないかも」——そんな不安を感じ始めたとき、すでに数ヶ月分のつまずきが積み重なっているケースは少なくありません。この記事では、小1算数の4〜7月の単元構成と、各単元でつまずきが起きやすいポイントを解説します。どのサインに気をつければよいかも合わせてお伝えします。

① 数の合成・分解(4〜5月)

入学直後の4月中旬から始まる「なかまづくりとかず(10までの数)」は、小1算数の出発点です。東京書籍の年間指導計画では、この単元だけで15時間が配当されており、数を「集まり(まとまり)」として捉える概念、数の読み書き、大小比較、そして数の合成・分解を扱います。特に「5は2と3」「7は4と3」といった合成・分解の理解は、6月以降のたし算・ひき算に直接接続します。ここで「数字を読める・書ける」と「数量として理解している」が一致していないと、計算で詰まる前に穴が生まれます。

② たし算・ひき算の概念(6月)

6月に入ると、いよいよたし算・ひき算の学習が始まります。この段階で保護者が見落としやすいのは、「計算の答えが合っている」と「意味を理解している」は別物という点です。「3+4=7」を暗記として答えられる子が、「あめが3個あって4個もらうと全部で何個?」の文章題で止まることは珍しくありません。式と場面の対応が取れているかどうか——この確認を6月の段階で行うことが、後の文章題苦手の予防になります。

③ 数の比較・どれだけ多い(7月)

7月には、たし算・ひき算の学習と並行して、「どちらがいくつ多い(少ない)か」という数の比較・差の概念が扱われます。東京書籍の教科書では「おおいのはどちらかな」として単元冒頭にも登場し、1対1対応でどちらが多いかを比べる操作から、「3個多い」という差の数量化へと発展します。単純な大小比較(どちらが多い)はできても、「あといくつふえればおなじになる?」という差の数値を答える問いで手が止まる子は少なくありません。この「引いて差を求める」という思考は、ひき算の意味理解と直結しており、②の単元との接続を確認する場面でもあります。

早期察知のサイン

以下のサインが見られた場合、該当単元のつまずきが始まっている可能性があります。単元の進度と照らし合わせて確認してください。

  • 指を折らないと答えられない問題が増えた(5月〜)——数の合成・分解が定着していない初期サイン。具体的な物なしで頭の中で処理できていない状態。
  • 計算は合うが文章題で手が止まる(6月〜)——式の「意味」の理解が追いついていない。たし算・ひき算の概念が記号処理に留まっている。
  • 「どちらが多い」はわかるが「いくつ多い?」で止まる(7月〜)——大小比較はできてもその差を数値化できていない。ひき算の意味理解が追いついていないサイン。
  • 「算数わからない」「難しい」と口にするようになった——複数回続く場合、特定単元への苦手意識が固定し始めているサイン。どの単元かを特定することが先決。

つまずきを放置した場合と早期対処した場合の比較

時期・単元 放置した場合 早期対処した場合
4〜5月
数の合成・分解
6月のたし算・ひき算で苦手が表面化する。指を使った計算から離れられない 具体的な物を使った補強で概念を再構築。たし算への移行がスムーズ
6月
たし算・ひき算
文章題・図形問題への応用力が育たない。式の暗記でしのぐ習慣がつく 式と場面の対応を確認し直すことで、2学期以降の文章題への土台が完成
7月
数の比較・差
「いくつ多い?」が答えられないまま進む。2学期のひき算の文章題で詰まりやすくなる ひき算の「差を求める」意味を具体的な物で補強。文章題への応用力の土台が整う
夏休み以降 複数単元の穴が重なり、対処が複雑になる。算数嫌いに発展するリスク 原因単元が特定されているため、ピンポイントで補強できる

統計

文部科学省の学習指導要領に基づく小学1年生の算数標準授業時数は年間136時間で、そのうち4〜7月(約11週)に配当される時間数は全体の約30〜35%に相当します。東京書籍「新編 新しい算数」の年間指導計画(令和6年度版)によると、この期間の主な単元は「10までの数の構成(15時間)」「たし算(計9時間)」「ひき算(計8時間)」「数の比較・どれだけ多い」で、数の概念・加減計算・比較という基礎が集中的に扱われます。学習指導要領ではこれらを「具体的な物を用いた活動を通して」理解させることを明示しており、抽象的な計算練習に先行する体験の必要性が公式に位置づけられています。

参照:文部科学省「小学校学習指導要領 算数」

RISU factsheet(2026年時点)によると、RISU算数の会員における学年ピークは小2・小3(各18%)で、小1〜小3で会員全体の約半数を占めています。また、会員の約75%が実学年より上の学年を先取り学習しており、1学年分を平均約6〜9ヶ月で修了しています。このデータは、低学年のうちに土台を固め、スモールステップで先取りを進めることが実際に機能していることを示しています。

参照:RISU factsheet

「うちの子が今どの単元でつまずいているかわからない」「どこから補強すべきか判断できない」といった保護者のお悩みについては、RISU 学び相談室でも実例を多数紹介しています。

よくある質問

小1で最も重要な単元はどれですか?

数の合成・分解(4〜5月)が最も重要です。「5は2と3」「7は4と3」といった数の構成の理解は、その後のたし算・ひき算、さらに繰り上がり計算のすべての土台になります。この単元の理解が曖昧なまま進むと、後の単元でつまずきが連鎖しやすく、介入が遅れるほど補強の範囲が広がります。

つまずきはどうやって察知できますか?

最もわかりやすい初期サインは計算速度の低下です。答えが合っていても、指を折る回数が増えた・以前より時間がかかるようになったという変化は、計算が無意識的でないことを示します。また、文章題で手が止まる場合は、式の意味の理解が追いついていないサインです。

子どもによって個人差はありますか?

個人差は非常に大きい時期です。就学前に数の合成・分解を体験的に学んでいた子どもと、入学時点でほぼ未経験の子どもでは、最初の単元を理解する速度に数週間単位の差が生じることがあります。ただし、この差は教材の初期設計次第で縮めることができます。現在地を正確に把握し、その子に合ったペースと方法で補強することが、個人差に対応する唯一の手段です。

夏休みに入ってからでも挽回できますか?

つまずいている単元と範囲が特定できていれば、夏休みは挽回の絶好の期間です。特に7月時点で「数の比較・差の概念」に不安がある場合、ひき算の意味の理解まで遡り、具体的な物をイメージしながら補強することで、2学期以降の文章題に備えることができます。複数単元にまたがっている場合は、最も根本にある単元から順に対処するのが効果的です。

今木智隆
RISU Japan株式会社 代表取締役
今木智隆

京都大学大学院エネルギー科学研究科修了後、デジタルマーケティング専門コンサルティングファームのビービット入社。
 金融・消費財・小売流通領域のサービスに従事し、2012年から同社国内コンサルティングサービス統括責任者に就任。2014年、RISU Japan株式会社を設立。タブレットを利用した幼児から小学生向け算数教材で、のべ10億件のデータを収集し、より学習効果の高いカリキュラムや指導法を考案。