「計算はできるのに文章題になると解けない」——この状態は珍しくありません。文章題の苦手には段階ごとの原因があり、どこでつまずいているかを見極めることが、的外れな練習を避けるうえで重要です。この記事では3工程別のつまずきパターンと対策を解説します。
① 読解段階のつまずき——「何を聞かれているか」がわからない
問題文を読んでも状況が頭に入らない、何を求めればいいかがつかめないのが読解段階のつまずきです。文章の中から「数量」と「関係」を取り出す読み方が身についていない状態で、国語力ではなく「算数的な読み方」の問題です。「何個?」「全部で?」「残りは?」といったキーワードに注目する習慣と、場面を絵や図に置き換える練習が有効です。
② 変換段階のつまずき——「式が立てられない」
問題の意味は理解できても「たし算なのかひき算なのか」の判断がつかない、または式を立てても場面と一致しないのが変換段階のつまずきです。これは計算記号の意味(+は「合わせる」、-は「取り除く・差を求める」)と場面が結びついていないことが原因です。具体物を使って「3個と4個を合わせるとき+を使う」という対応を体験的に積み上げることで解消されます。
③ 計算段階のつまずき——「式は合っているが答えが違う」
読解・変換は正しくできているのに計算でミスが出るのが計算段階のつまずきです。文章題の問題ではなく計算力の問題であり、対策は文章題の練習ではなく計算の精度向上に絞ります。ここを混同して文章題演習を増やしても計算力は上がりません。つまずいている段階を正確に特定してから対策を選ぶことが重要です。
④ 段階別対策のまとめ
読解段階のつまずきには、問題文を絵や図に置き換えさせる練習と、「何を聞いている?」と声かけしながら読む習慣づけが有効です。変換段階には、式と場面を具体物で対応させる体験の積み重ねが必要です。計算段階のつまずきはドリルなどで計算精度を上げることで対処できます。どの段階かを見誤ると対策が的外れになるため、まず「どこで止まるか」を観察することを優先してください。
3工程別のつまずきパターンと対策
| 工程 | 読解 | 数式変換 | 計算 |
|---|---|---|---|
| つまずきのサイン | 問題文を読んでも 何を求めるか分からない |
状況はわかるが 式が立てられない |
式は合っているが 答えが違う |
| 原因 | 算数的な読み方が 身についていない |
計算と場面が 結びついていない |
計算の精度・ 自動化が不足 |
| 有効な対策 | 図・絵への置き換え 「何を聞いている?」の声かけ |
具体的な物で 式と場面を対応させる |
計算ドリルで 精度・速度を向上 |
| やりがちなNG対策 | 文章題の量を増やす | 解き方パターンを暗記させる | 文章題の演習を増やす |
統計
文部科学省・国立教育政策研究所「令和6年度全国学力・学習状況調査」(小学6年生・悉皆調査)の結果によると、算数では「数学的な考え方」を評価する記述式問題(文章題・応用問題)の正答率が、計算問題と比較して低い傾向にあります。同調査の解説資料では、「事象を数量の関係として捉え、式に表現すること」に課題があると指摘されており、この記事で示した「変換段階」のつまずきが広く存在することを示しています。
「10億件の学習データが教える 理系が得意な子の育て方」では、10億件の学習データをもとに、子どもが算数でつまずきやすいポイントや、文章題を克服するための考え方が扱われています。本書の内容として「多くのお子様がつまずきやすいポイント」や「考える力を身に付ける『文章題』の克服方法」が挙げられており、RISU算数はデータやつまづきへの対処法を元に設計されていることを示しています。
参照:今木智隆(2019)『10億件の学習データが教える 理系が得意な子の育て方』文響社
よくある質問
文章題はいつごろから難しくなりますか?
小2後半〜小3が最初の難所です。小2後半から「場面を式に変換する」問題が本格化し、繰り下がり・掛け算の意味理解と合わさって急に難しくなる子が増えます。特に「あといくつ多い?」という差を求める問題(変換段階のつまずき)と、掛け算を「○個のまとまりが○つ分」として捉える問題が小3での苦手形成の主な要因になります。
読解力と文章題の苦手には関係がありますか?
関係があります。文章題では、計算力だけでなく、問題文を最後まで読み、何を聞かれているのかを理解する力が必要です。近年はSNSや動画など短い情報に触れる機会が増え、長文を読みきる経験が少なくなりがちです。そのため、長文を読みきり、内容を理解する力が不足すると、文章題でも「どの数を使うか」「何を求めるか」でつまずきやすくなります。
家庭ではどんな声かけをするとよいですか?
「何を聞かれている?」「どういう場面?」と考える順番をたどる声かけが効果的です。「答えは何?」と急かすのではなく、「問題文をもう一度読んで、数字を丸で囲んでみて」「この場面を絵で描けそう?」など、読解→変換の工程を一緒にたどる声かけが、子どもが自分で解くプロセスを育てます。答えの正誤より「考え方の順番」を声かけの中心にすることを意識してください。