数の概念が育っていない場合のサイン

回答

数の概念が形成されていないことは、日常の行動・計算の様子・声かけへの反応から察知できます。「数字は読める・唱えられる」状態でも数の概念が育っていないケースは少なくなく、サインに早期に気づき対策できれば、十分に回復が可能です。

「数字は読めるし、10まで数えられる。でも何かが違う気がする」——数の概念が形成できていないことは、数が唱えられていると気づきにくいため、発見が遅れやすいです。この記事では、数の概念が育っていない場合の5つのサインと確認方法、戻し学習の起点を解説します。

① 5つの主要サイン

サイン1:唱えた数と数量がずれる

「1、2、3、4、5」と声に出しながらおはじきを指差したとき、唱えた数と指差した個数がずれる状態です。6個のおはじきを「5」と言って終わる、または「7」まで唱えてしまうケースがこれに当たります。数を唱えられることと、数量と対応させながら数えられることは別の能力であり、これは数と数量の1対1の対応が定着していないサインです。

サイン2:「○個ちょうだい」に正確に応じられない

「5個取って」と言われて4個または6個を取ってくる、毎回個数が変わる、という状態です。「いくつ?」の問いに答えられても、求められた数を正確に取り出せない場合は、数が「量の指定」として理解できていない状態を示しています。

サイン3:見かけで多少を判断する

同じ数のおはじきを「広く並べた列」と「まとめた列」で見せると、広い方が「多い」と答える状態です。これはピアジェが示した数の保存の概念が身についていない状態であり、小2以降でもこのように答える場合は数の概念の土台を確認する必要があります。

サイン4:具体的な物なしでは計算できない

就学後、指や具体的な物がなければ計算できない状態が続いている場合です。低学年の初期には自然な姿ですが、小1後半以降も指なしでは「5+3」が出てこない場合、数の合成・分解が身についていないサインです。

サイン5:数の順序の感覚が曖昧

「7の次の数は?」「6の1つ前の数は?」への回答に時間がかかる・毎回1から数え直す必要がある状態です。数列を「意味のある連続」として捉えられていないため、数直線・大小比較・繰り上がりの理解に影響します。

② 確認方法

保護者が家庭で確認できる簡単な方法として、次の3点を試してください。まず「おはじきを7個並べて、1個ずつ指差しながら数えてもらう」——唱えた数と指差しがずれないかを確認します。次に「5個のクッキーを用意して、2個取ってもらう」——取り出す個数が毎回正確か確認します。最後に「広く並べた6個と、まとめた6個を見せて『どちらが多い?』と聞く」——見かけではなく個数で判断できているかを確認します。3点のうち1点でも安定しない場合は、具体的な物操作の体験を増やす補強が有効です。

③ 戻し学習の起点

数の概念の戻し学習をするときは、「確認できた中で最も早い段階に戻る」ことが原則です。サイン1・2が見られる場合は1対1対応(指差しながら数える・求められた数を取り出す)から始めます。サイン3が見られる場合は具体的な物の操作(並べる・分ける・比べる)をたくさん行います。サイン4・5が見られる場合は数の合成・分解を具体的な物で繰り返す練習に戻ります。教材や式の練習より「手を動かして数を操作する体験」が戻し学習の本体であり、これなしにドリルを増やしても根本は変わりません。

5つのサイン・対応する発達段階・確認方法

サイン 対応する発達段階 家庭での確認方法 戻し学習の起点
①唱えた数と数量がずれる 数の1対1対応が未定着 おはじきを指差しながら数えさせる 指差しながら数える練習
1〜10を安定させる
②○個取り出せない 数が「量の指定」として機能していない 「○個取って」を繰り返し試す 具体的な物で「いくつ」を学ぶ
③見かけで多少を判断 数の保存の概念が未形成 同数を異なる配置で見せて比較させる 並べる・分けるの具体的な物の操作から
④具体的な物なしで計算できない 合成・分解の抽象化が未完了 具体的な物なしで「3+4」を問う 合成・分解を具体的な物で繰り返す
⑤数の順序が曖昧 数列の連続性の理解が不足 「7の次は?」「6の前は?」を聞く 数字カードの並べ替え遊びから

統計

ピアジェとシェミンスカの発達心理学研究(1941年)では、数の保存の概念、つまり物の並び方や見た目が変わっても数は変わらないという理解が、子どもの数概念の発達において重要であることが示されています。数の保存の概念は、おおむね6〜7歳ごろに成立してくるとされ、この時期より以前に保存の概念が安定していないことは発達上自然な姿です。一方で、就学後も保存の概念が不安定な場合は、年齢だけで判断せず、具体的な物を並べる・分ける・対応させるといった操作を通じて理解の状態を確認し、必要に応じて補強することが有効です。発達段階には個人差があるため、「何歳か」だけで判断するより、「数え方や並べ方が変わっても同じ数だと説明できるか」を行動で確認することが子どもの理解度を把握する上で役立ちます。

参照:Piaget, J. & Szeminska, A.(1941)La genèse du nombre chez l’enfant(邦訳:『数の発達心理学』国土社、1992年)

RISU factsheet(2026年時点)によると、年中・年長向け「RISUきっず」は全12ステージ・約900問で構成されており、「かずをかぞえよう」(1対1対応の定着)から「たしざん・ひきざん」(抽象化)まで段階的に設計されています。つまずき検知から原則1時間以内に解説動画が届く仕組みは、この記事で示したサイン④⑤(具体物なし・順序感覚)に対応した補強を個別に届ける設計です。段階に戻った補強が機能した事例として、幼稚園児での算数検定11級(小1相当)合格実績が多数報告されています。

参照:RISU factsheet

「サインは気になるが、どこから補強すればいいか判断できない」「戻し学習をどう設計すればいいかわからない」といったお悩みの実例は、RISU 学び相談室でも紹介しています。

よくある質問

数の概念はいつまでに身につければいいですか?

個人差が大きいですが、小2までに1対1対応・合成分解の基礎が定着していることが目安です。ピアジェの研究では保存の概念の確立は6〜7歳とされており、就学直後の小1で全員が揃う必要はありません。ただし小2の繰り上がり計算・繰り下がり計算では数の合成・分解の理解が必須になるため、そこまでに身につけることが目標です。

戻し学習はどこから始めればいいですか?

確認できた中で最も早い段階、具体的には「1対1対応(指差しながら数えられるか)」から始めるのが基本です。1対1対応が安定していれば合成・分解、合成・分解が安定していれば抽象的な計算、という順序で補強を進めます。「今どこができているか」を確認してから戻る段階を決める手順が、補強の範囲を最小化するうえで重要です。

計算ミスが多いのは、数の概念が弱いからですか?

必ずしもそうとは限りません。計算ミスには「理解不足型(数概念が弱い)」「処理速度型(反復が足りない)」「習慣化不足型(確認しない)」の3種類があります。数の概念が原因の場合は「数字が変わると対応できない」「具体的な物なしでは計算できない」というサインが合わさって現れます。「やり直すと正解できる」「時間をかければ正解できる」場合は習慣化・処理速度の問題である可能性が高く、数の概念の補強より先に他の原因を確認することを推奨します。

今木智隆
RISU Japan株式会社 代表取締役
今木智隆

京都大学大学院エネルギー科学研究科修了後、デジタルマーケティング専門コンサルティングファームのビービット入社。
 金融・消費財・小売流通領域のサービスに従事し、2012年から同社国内コンサルティングサービス統括責任者に就任。2014年、RISU Japan株式会社を設立。タブレットを利用した幼児から小学生向け算数教材で、のべ10億件のデータを収集し、より学習効果の高いカリキュラムや指導法を考案。