RISU 学び相談室

塾任せでも、家庭任せでもうまくいかない 中学受験の成績を伸ばすカギは「塾との付き合い方」にあった

中学受験スリースターズ代表 三浦祐輝様

「頑張っているのに成績が伸びない」
「塾に通っているけれど、このやり方で合っているのか不安」

中学受験を考えるご家庭から、こうした声をよく耳にします。参考書や問題集、学習法の情報はあふれているのに、なぜ迷ってしまうのでしょうか

今回お話を伺ったのは、中学受験スリースターズ代表のユウキ先生。
書籍『「まだ伸びる!」をあきらめない 中学受験 子どもの成績の本当の伸ばし方』では、テクニックではなく「塾と家庭の関わり方」に焦点を当てています。
今回は、塾との関わり方や、先生が実践された子育てと学習のコツを教えていただきました。

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「家庭と塾の情報ギャップ」が、親を不安にさせている

いつかは本を書きたいと思っていて、指導の中で感じたことをメモに溜めていたんです。
それを今回まとめる機会をいただきました。

一番の理由は、保護者の方の悩みがあまりにも多いことですね。

どう伴走すればいいのか。
家庭学習はどこまでやればいいのか。
塾に何を期待していいのか。
そもそも、塾に何を聞いていいのかわからない。

共通していえるのは「正解が分からない」という不安です。
「塾側が当たり前に持っている情報が、家庭には届いていない。逆に、家庭の不安も、塾にうまく伝わっていない。」

塾と家庭のあいだに情報ギャップがあると感じています。このギャップがあるからこそ、保護者は正解探しに向かってしまいます。

「どの教材をどこまでやればいいですか?」
「宿題は全部やらせるべきですか?」
もちろん気持ちはよく分かります。でも、本来そこが本質ではないんですね。
「教材や量の問題ではなく、塾をどう使うか。家庭がどう関わるか。その設計のほうがずっと大事なんです。」

今回の書籍では、「塾との付き合い方(使い方)」「家庭での伴走の仕方」という2つの側面(塾と家庭)から、これを押さえると成績が伸びやすいというポイントを整理しました。

ギャップが少なくなれば、無駄に悩む時間は減るはず。その橋渡しをしたい、というのがこの本への思いですね。

塾選びは「ブランド」より「教室長」で決まる

塾というと、「大手かどうか」「合格実績がすごいか」といった看板に目が向きがちです。しかし現場では、教室長の力量が講師の雰囲気や教室全体の空気を大きく左右します。

とくに重要なのが、社会性とコミュニケーション力です。
塾講師は専門性の高い仕事ですが、キャリアの多くを塾内で積んできた先生も少なくありません。そのため、保護者対応や家庭との連携では経験の幅に差が出ることがあります。

社会経験が豊富な先生ほど、保護者の立場や不安を理解しやすく、対話もスムーズです。

たとえば、

  • 保護者と建設的に対話できるか
  • 家庭の状況を踏まえた提案ができるか
  • 感情的にならず、客観的に判断できるか

こうした社会性は、教室の質に直結します。子どもだけでなく、家庭も含めて支える意識があるかといった視点を意識して塾選びをしてみるとよいでしょう。

正直に言うと、合格実績は「たまたま優秀な子が多かった年」ということもあります。数字だけで判断するのは危険です。

もし参考にするなら、

  • 在籍人数に対する合格割合
  • どんな層の子がどの程度伸びたのか

といった詳細の数値まで開示しているかどうかを見るとよいでしょう。

ブランドよりも、その教室を誰がどう運営しているのか、を見てください。塾選びは会社選びというより、責任者選び。その視点を持つだけで、判断基準は大きく変わります。

入塾前に整えたいのは「学ぶ姿勢」と「質問力」

「先取りしたほうがいいですか?」という質問も多いのですが、無理に難しい問題集をやらせる必要はありません。小1・小2からハイレベル教材に取り組むご家庭もありますが、表面的に解けるだけでは長く伸びる力にはなりません。大切なのは、内容の先取りより土台づくりです。

その土台とは「学ぶ姿勢」

たとえば、

  • 字が汚い
  • ノートが整理して書けない
  • 字を極端に大きく書く

こうした状態では、どんな塾に入っても成績は安定しません。計算力以前に、学ぶ姿勢が整っているかどうかが重要です。

そしてもう一つが「質問する力」
「うちの子、自分から質問できないんです」という相談は少なくありません。しかし、分からないことをそのままにせず、大人に素直に聞ける力は、学力と同じくらい大切です。

たとえば、

  • 店員さんに場所を聞けるか
  • 習い事で自分から挨拶できるか
  • 親以外の大人と会話できるか

こうした日常の対人経験が、塾での伸びにつながります。

入塾前に必要なのは、難しい教材ではなく、
「丁寧に書くこと」「整えて学ぶこと」「分からないときに聞くこと」。

先取りは、理解できる範囲で無理なくで十分です。伸びる子に共通しているのは、先取り量ではなく、学ぶ姿勢と質問力が整っていることなのです。

面談は「相談」ではなく「作戦会議」にする

保護者の方が、
「とにかく話を聞いてほしい」
「成績が不安です」
「家庭学習がうまくいかなくて…」

そういった漠然とした内容をぶつけるのも、私はそれでいいと思っています。
面談は、気持ちを整理する場でもありますから。

ただ、もし「具体的な打ち手を整理したい」「家庭でのサポート方法を明確にしたい」と思うのであれば、少しだけ準備していくことをおすすめします。

ポイントは、家庭での状況を文章にして持っていくことです。できれば、お子さんの様子もありのまま書いておくとよいですね。

たとえば、

  • 1週間の勉強時間
  • 家庭で困っていること(宿題が終わらない、解き直しを嫌がる など)
  • 志望校
  • 塾に期待すること

これを紙1枚にまとめるだけで十分です。可能であれば、面談前に事前共有しておくとさらに効果的です。

当日は、そのメモを読んだ前提で話が始まります。すると、面談は単なる「不安の共有」ではなく、具体的な改善策を決める作戦会議に変わります。

塾側も、具体的な情報があればあるほど、具体的な提案ができます。

面談は「三者面談」という使い方もある

私は、面談を三者面談のように使うことも多かったです。
ただし、これはケースバイケース。

もし保護者が中学受験初心者で、まずは全体像を知りたいという段階なら、親だけの面談でもよいと思います。

一方で、最近は保護者のほうが情報をたくさん持っているケースも少なくありません。
その場合は、お子さんも一緒に聞くことで効果が出ます。

先生からの説明を本人も直接聞くことで、「先生もこう言っていたから、まずはここを頑張ろう」と、第三者の視点を活用できます。

親が言うと反発することでも、先生が言うと素直に受け止められることはよくあります。

親がすべてを背負うのではなく、塾をうまく戦略パートナーとして使う。その意識を持つだけで、面談の意味は大きく変わります。

うまくいく家庭に共通するのは「素直さ」

両親が本気で向き合い、ときに意見がぶつかるくらいの熱量がある家庭は、むしろ健全です。一方で叱ってばかりという状態はうまくいきにくいですね。

そして何より大切なのは、信頼した相手のアドバイスを素直に実行することです。

塾を選んだなら、まずは信じてやってみる。途中で自己流を混ぜてしまうと、子どもが混乱します。
お子さんも保護者の方も「素直さ」が、家庭全体の伸びを左右すると感じています。

やらないほうがいいのは「終わらせることを目的にする」宿題

ご自身の受験経験を基準にすることですね。熱心な保護者ほど「私のときはこうだった」という物差しを使いがちです。
今の受験は前提がまったく違います。出題傾向も、学習量も、求められる力も変わっている。親世代の成功体験が、そのまま当てはまるとは限りません。
まず大切なのは、お子さんの力を客観的に見ることです。

そしてもう一つ、見直してほしいのが「宿題は全部終わらせるもの」という考え方です。

理解していないまま終わらせることを目的にしても、意味はありません。「できない」「終わらない」という感覚だけが残り、勉強そのものが嫌いになることもあります。

宿題の本来の目的は、量ではなく定着です。
順番は、

  1. 理解:分かること
  2. 定着:繰り返して身につけること
  3. 量:ここは理解できていて、定着してから増やせばいい

私自身、子どもに宿題を教えようとして親子げんか、さらには夫婦げんかにまで発展していました(笑)つい熱が入りすぎてしまうこともあり、このままでは、塾に通っている意味が活かしきれていないかもしれない、と感じる場面があったんです。

そこで、自分の子ども用に「宿題に入る前に30分動画を見れば、ある程度理解できる」というコンセプトで解説動画を作りました。

動画を見てから取り組むと、子どももスムーズに解き進められる。YouTube世代の子どもたちには、動画のほうが入りやすい面もあります。

大切なのは、終わらせることではなく、分かる形にしてあげること。その工夫が、家庭の空気も、学習効率も、大きく変えていきます。

「体験」と「土台づくり」を大切にした子育ての実体験

塾には低学年から通わせていました。ただ、それ以上に大事にしていたのは「外での体験」ですね。

博物館や科学館に行く。旅行に出かける。できるだけ家族で外に出て、世の中に触れる機会をつくっていました。
理科や社会って、知識だけで理解するのは難しい教科なんです。実際に見たことがある、行ったことがある、体験したことがある、その具体的なイメージがあるかどうかで、理解の深さがまったく違います。

それからもう一つ、私は中学受験をしていません。ただ、元大手進学塾で中学受験対策に関わっていたとき、「こんな内容を小学生が勉強するのか」と驚きました。正直、すごい世界だなと。
自分は大学受験の勉強を高校から本格的に始めましたが、時間的にはかなり厳しかった。だからこそ、中学受験から高度な思考訓練を積んでいる子どもたちは、やはり土台が違うと感じました。

早くから対策している子が有利という単純な話ではありません。ただ、「思考する訓練」を早い段階から積んでいることの意味は大きい。そういう環境に身を置くこと自体が、一つの経験になると思っています。

最後に保護者の方へ

学校選びも、勉強法も、どうしても偏差値が中心になりがちです。
でも、僕はそれだけで決めてほしくないと思っています。

子どもが通って幸せそうか。
先生の雰囲気はどうか。
校風は合っているか。

実際に足を運んでみると、生徒の表情や校内の空気感、ロッカーの使い方ひとつにも、その学校らしさが表れています。そうした肌感覚は、数字以上に大切な判断材料になります。

進路を考えるときは、偏差値だけで一本に絞るのではなく、

「ぜひ挑戦したい難関校」
「通えたらきっと幸せになれる学校」
「ここなら安心して任せられる学校」

このように、偏差値以外の軸も含めて3つほど選択肢を持っておくとよいと思います。
もし能力的に厳しさを感じたときも、柔軟に軌道修正できますし、心にも余裕が生まれます。

難関校だけを目指して無理をさせ続けると、どこかでひずみが出ます。
「ここに受かるために無理をする」のではなく、「ここまでできるようになればいいね」と目標を段階的に設定していくことが大切です。

塾はうまく使うもの。家庭は安心できる場所であること。
そのバランスが取れていれば、子どもは自然と伸びていきます。

■ユウキ先生(三浦祐輝)|中学受験スリースターズ代表

【プロフィール】
元大手進学塾教室長、経営コンサルを経て独立。自身の息子の中学受験伴走の中で、中学受験親の辛さを知り、授業動画の配信をyoutubeでスタート。
その後、中学受験スリースターズを創業し、授業動画の配信、保護者向けコンサルティング、オンライン個別指導などで中学受験指導に携わっている。
中学受験スリースターズ:https://www.threestars-online.com/

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