精読がカギ!国語が安定しない子に効く「ゆっくり読む・聞く」家庭習慣
「うちの子、国語だけ成績が安定しなくて…」
「文章題になると急に解けなくなるんです」
保護者の方から、そんな声をいただくことがよくあります。
算数のように「どの単元が苦手」と見えにくい国語。だからこそ、どうサポートすればいいのか迷ってしまいますよね。
今回のインタビューは、「国語力はすべての学びの土台」と語る国語教育の専門家・南雲先生。
書籍「小学生のための 文章を正しく読む力を育てる本」を出版。
読解力の正体と、家庭でできる関わり方について伺いました。
▼「小学生のための 文章を正しく読む力を育てる本」

国語力は、すべての学びの「スタートライン」になる
国語は、他の教科の基礎になるといわれますが、なぜでしょうか。
最近のテストは、どの教科も「読む力」が前提になっています。
理科も社会も、長い文章や資料を読み取り、内容を理解したうえで答える問題が増えています。
算数でさえ例外ではありません。文章題が読めなければ、式を立てることすらできません。
子どもがつまずいている場面を見てみると、「解き方がわからない」のではなく、「何を聞かれているのかが、そもそも分かっていない」ことが少なくありません。
問いの意味がつかめない。条件が整理できない。どこに注目すればいいのかが見えない。
そうなるとスタートラインに立つことさえ難しくなってしまいます。
国語力は、答えを出す力そのものではありません。その前にある、「文章を理解する力」を鍛える必要があります。
読む。理解する。この土台があって、はじめて「考える」のスタートラインに立てるといえるでしょう。
国語の成績が安定しないときは「できないポイント」を見極める
国語の成績が安定しないという相談をうけますが、どのようなことが考えられますか。
大きな要因のひとつは、素材文の内容を正確に読み取れていないことにあります。
国語は、なんとなく解く教科ではなく、いくつかの段階を踏んで正解にたどり着きます。
できない原因として、たとえば次のようなことが挙げられます。
- 素材文そのものが読み取れていない
- 設問の意味を取り違えている
- 素材文から答えを探せない
- 正確にアウトプットできない
どれか一つでも欠けると、点数にはつながりません。
つまり、「国語が苦手」なのではなく、どこかでつまずいているだけ、というケースがほとんどなのです。
「文章は理解できているのに、設問の読み取りでミスをする」
「答えは見つけられたのに、書き方で失敗する」など、そんな小さなズレが、点数の差になって表れているだけかもしれません。
だから、できない子と決めつけないことが重要です。どこでつまずいているのかを一緒に探してあげてください。
「点数という結果より、つまずきの場所を見る」その視点が、国語との向き合い方を大きく変えてくれます。
やはり読書は必要です
読書が大事とよく聞きますが、国語力はあがりますか?
本を読めるようにすることはすごく大事なポイントです。
国語はテクニックより、経験値の教科なんですね。
経験値とは、どれだけ言葉や文章に触れてきたか、という積み重ね。
語彙、言い回し、文章の組み立てなど、たくさんのインプットが、知らず知らずのうちに子どもの中に蓄積され、それが読解力の土台になっていきます。
読書経験を積むとともに、言葉に触れる時間そのものを増やすことも重要です。
その方法は、実はとても身近なところにあります。
「読む」のが苦手なら、「聞く」ことも取り入れて
読み聞かせというと、幼児期だけのものと思いがちですが、小学生になってからも、ぜひ続けてほしいです。
聞くことによっても、語彙や表現はしっかり身についていきます。
動画サイトなどでもプロの役者やアナウンサーの朗読が公開されています。
大人が聞いても楽しめますから、一緒に耳を傾けてみてはどうでしょうか。
便利なツールも使いながら、物語を共有して、「おもしろかったね」「主人公はどうなるのかな」など感想を伝え合えば豊かな親子の時間になるでしょう。
文章を読み解くトレーニングにもなります。
「もう一回読んで」は、成長のサイン
同じ本を何度も「読んで」と持ってくる、保護者からすると少し大変に感じることもありますよね。
でも、それは子どもが精密に読んでいる証拠。繰り返すたびに、新しい発見があるから、また読みたくなるんです。
その、もう一回の積み重ねこそが、語彙や理解力をじわじわと育てていきます。
国語の力の土台は、特別な勉強で身につくものではなく、親子で言葉を楽しむ日常の中で、ゆっくり育っていくもの。
無理に「自分で読みなさい」と突き放すより、一緒に楽しむ時間のほうが、ずっと自然に言葉は育っていくのかもしれません。
国語は生まれつきで決まる?
国語の得意・不得意って、生まれつきですか?
小さい頃に読み聞かせをあまりしてこなかったんですが、もう遅いでしょうか?というご質問をいただいております。
生まれつきの個性はあると思います。でも、幼少期は言葉をぐんぐん吸収できる時期。
だからこそ、この時期は少しだけ意識して、言葉のインプットを増やしてあげることが大切です。
といっても、問題集を解くような勉強は必要ありません。「絵本を読む」「童謡を歌う」「対話をする」など、遊びの延長で「言葉に触れる時間」を増やすだけでいいのです。
言葉への興味には個人差があります。
それでも、洪水のようにインプットを重ねれば、それぞれに力は伸びていきます。
保護者はどうしても、テストの点数など「できた結果」を求めてしまいがちです。
でも、まず目を向けてほしいのはアウトプットよりもインプット。
言葉をたくさん浴びることが、あとから必ず力になって返ってきます。
文章を「見慣れている子」ほど国語は伸びる
読書量と読解力の関係について教えてください。
実際、読書量が多いと、国語の成績が安定している子どもが多いと感じます。
たくさんの文章に触れている子は、以下のような特徴があります。
- 語彙が豊富
- 読むのも内容理解も速い
- 全体の流れをつかむのが上手
- 論理的に考えられる
このような力が自然と身についているため、初めて見る文章でも戸惑わず、すっと内容が頭に入ってくるんですね。
読書は単なる趣味ではなく、「読解力」の土台そのものになっています。
「読まないまま解く」クセが、あとで壁になる
一方で、文章全体をしっかり読まず、設問に関する部分だけを見て、解答してしまう子もいるようです。
小学校中学年くらいまでは、それでも点が取れてしまうことがあります。
でも高学年になると、文章全体を理解していないと解けない問題が増えてきます。
たとえば、全体の内容について考察する問題、筆者の主張を説明する問題などには、対応できません。
「時間がなくて解けなかった」と子どもは言いますね、保護者もそれに納得し、スピードをつけさせようと考えます。
でも本質は、読む力そのものが足りていないかもしれないのです。
「読む」ことを習慣にしてほしい
国語の点数を上げる、という短期的な視点ではなくて、将来のために「読む経験」を増やしてあげてほしいんです。
読書は、すぐに成果が見える特効薬ではありません。でも、静かに、確実に、土台を強くしていく力があります。
読解力とは「書いてあることを、そのまま受け取る力」
読解力について改めてうかがいたいです。
「うちの子、ちゃんと読めているはずなんですが…」保護者の方から、こんな声をよくいただきます。
音読はスラスラできる。
漢字が読める。
だからこそ、「読めていない」と言われても、ピンとこない状況だと思います。
「読める」と「読解できる」は、別物なんです。
音読できる=理解できている、ではない
スムーズに音読できても、内容を聞くと「あれ?どういう話だっけ?」となることがあります。
これは、文字は読めているけれど、意味は頭に入っていない状態。
読解力とは、ただ文字をたどることではなく、書いてある内容を正確に理解できる力です。
もっと言えば、主観を入れずに、書いてあることをそのまま受け取る力です。
子どもは、無意識に「自分の解釈」を足してしまう
実は、多くの子どもがやってしまいがちなのが、自分なりの解釈を足して読んでしまうことですね。
文章には書いていないのに、「きっとこういう気持ちだったんだ」「たぶん○○のためにこうなったんだ」と、想像で補ってしまうことがたびたびおこります。
もちろん想像力自体は大切な力です。でもテストや読解問題では、「書いてあること」が正解の根拠。
そこに主観が混ざると、いつの間にか内容がねじ曲がってしまいます。
「読めない」というより、自分のフィルターを通して読んでしまっている状態と言ったほうが近いかもしれません。
そのフィルターをできるだけ薄くすることが大切です。
カギは「精読」ゆっくり、正確に読む
では、どうすれば「書いてあることをそのまま受け取る力」は育つのでしょうか。
ポイントは、速く読むことではなく、細かいところまで取りこぼさないように読む「精読」です。
速く読むことよりも、丁寧に、正確に読むこと。まずはここを大切にしてほしいです。
文章をなんとなく流し読みするのではなく、一文一文、意味を確かめながら読む、それだけで、理解度は大きく変わってきます。
たとえば、
- 何が(主語)何をしたのか
- 「それ」「これ」(指示語)は何を指しているのか
こうした基本を一つひとつ確認しながら読むことが非常に重要です。
「それって、何を指しているんだろう?」「この文の主語は何だろう?」
そんな問いを持つだけでも、理解はぐっと深まります。
特別なテクニックというより、丁寧に読む経験の積み重ねが、結果として、ぶれない読解力を育ててくれます。
速読は必要?まずは「正確に読めること」が先
速読は必要ですかという質問もありまして、詳しくおうかがいしたいです。
読むスピードが遅いと、 「速読トレーニングをしたほうがいいのかな」 と心配になりますよね。
速読術そのものを、特別に勉強する必要はありません。あれは、もともと得意な人がさらに伸ばす世界です。
「速く読む」だけでは意味がない
到達目標は、速読速解力をつけることです。
いくら速く読めても、内容が頭に入っていなければ意味がないです。
読むスピードだけを上げても、点数にはつながりません。
いたずらに速さを求めるのではなく正確さ。まずは「きちんと理解する読み方」を身につけることが先なのです。
読むのが遅いのには、理由がある
実は、読むスピードが遅いのにもちゃんと理由があります。
- 知らない単語が多く、言葉のまとまりを認識できない
- 文章を見慣れておらず、読む体力がない
- 目がうまく先とらえていない
つまり、能力の問題というより、経験や慣れの問題であることがほとんど。
語彙が増え、文章に触れる量が増えれば、読むスピードは自然と上がっていきます。
小さいころから速さを求める必要はありません。成長とともにスピードはついてきますので心配することはありません。
それでも気になるなら「音読」を
もし読むのが極端に遅い場合は、「音読」で文への対応力をつけましょう。
少し早口でテンポよく読むことで、目も自然と先へ先へと動くようになります。
まずは数行から始め、少しずつ増やしてみましょう。
子どもの力を信じて、焦らず育てる
最後に保護者のみなさんにアドバイスを改めてお願いします。
国語力は、テストの点数のための力じゃないんです。自分で考えて、理解して、表現するための力だと思っています。
すぐに成果が見えるものではないからこそ、遅れていないかな、このやり方で合っているのかな、と不安になることもありますよね。
でも、そんなに心配しなくて大丈夫だと言います。
子どもは、自分で伸びていく力をちゃんと持っています。
できていないところばかりに目を向けすぎると、その不安は子どもにも伝わってしまいます。
焦らず、比べず、完璧を求めない、というスタンスがよいと思います。
今日、少し言葉を交わせた。
一緒に本を読めた。
それだけでも、十分な積み重ねです。
お子さんの伸びる力を信じて、その成長を楽しんでみてください。
言葉に関心を持たせ「自ら考え、学べるように導く」
大切なのは、子ども自身が言葉に関心を持ち、自ら考え、理解しようとする姿勢です。
点数や結果の前に、日々どれだけ言葉に触れ、学びに向かえているか。その積み重ねこそが、本当の土台になるのだと感じています。
「ちゃんとやらせなきゃ」と思ったときこそ、先生のお言葉通り「ほんの少し気を楽に」。
家庭の会話や読書の時間が、子どもにとっていちばん自然な学びの場なのかもしれません。

■南雲ゆりか/南雲国語教室主宰
ープロフィールー
東京生まれ。横浜国立大学教育学部卒。横浜市立小学校教諭を経て大手進学塾へ。難関クラス指導と模試・教材の作成を担当した。都内で国語教室を主宰し、「正確に読む力、正確に伝える力」をモットーに指導にあたっている。朝日新聞EduA「国語のチカラ」連載中。著書に「名探偵コナンと楽しく学ぶ小学国語ドリル 書く力」、「小学生のための 文章を正しく読む力を育てる本」(すばる舎)、監修に「ちいかわ漢字ドリル」(講談社)など




