RISU 学び相談室

Q

子どものやる気を引き出すためにご褒美をあげてもいいのでしょうか

Q RISU算数スタッフの回答
「子どもがなかなか勉強へのやる気を出してくれない……」
そんな悩みをお持ちのおうちの方は多いことでしょう。

しかし、やる気というのはそう簡単には出ないものです。一時的なやる気を出させるために、むやみにご褒美をあげてしまっているご家庭も多いのではないでしょうか。

本記事では、子どものやる気を正しく引き出す効果的なご褒美について、徹底解説します。

ご褒美をあげる際の5つのポイント

ご褒美は、子どもの勉強へのモチベーションを上げるための有効な手段です。
しかし、あげ方を間違えると、逆効果になってしまうことも。

そこで、ご褒美をあげる際に注意したいポイントを5つご紹介します。

ポイント①「物」だけではなく「経験」もご褒美に

子どもにご褒美をあげる際に、ゲームやおもちゃといった「物」を買い与えているご家庭は少なくないでしょう。

しかし、欲しい物を次々と買い与えていると、ご褒美を買ってもらえることが子どもにとって当たり前になってしまいます。
次第に豪華な物を要求するようになったり、さらには、ご褒美ではモチベーションを保てなくなってしまうことも考えられます。

そんな時には、「物」ではなく「経験」をご褒美にすることをお勧めします。

博物館や科学館に連れて行ってあげる、家族でキャンプや旅行へ出かけるなど、普段とは少し違う、特別な経験をご褒美としてあげてみましょう。

ただ欲しい物を買い与えるよりも、普段はできない経験をプレゼントする方が、ずっと子どもの将来に役立つはずです。

ポイント②ご褒美をあげすぎない

ポイント①でも述べた通り、ご褒美を頻繁にあげていると、ご褒美をもらうことが子どもにとって当たり前になってしまいます。
ご褒美に慣れてしまった子どもは、「ご褒美をもらえないなら、やらない」と考えるようになるでしょう。

ご褒美は、たまにもらえるからこそ、モチベーション維持に効果を発揮するのです。

たとえば、テストでいい点数を取るたび無闇にご褒美をあげていたのでは、ご褒美はあまり効果を発揮しません。
子どもの様子をよく観察し、「モチベーションが落ちてきたかな?」と感じたら、「今回頑張ったらご褒美をあげるよ!」と声をかけて、子どものやる気を引き出しましょう。

ポイント③ご褒美は適切なタイミングで

子どもが自主的に勉強に取り組んで、テストで良い結果を出したとします。
子どもの心の中には、自分の努力が実を結んだうれしさとともに、「次のテストでも点数をキープしたい!」というモチベーションが生まれます。

しかし、ここでおうちの方が「よく頑張ったね」と子どもにご褒美を買い与えました。
するとどうでしょう。子どもにとって、勉強を頑張る目的が「努力が実ることの喜び」から「ご褒美をもらうこと」へシフトしてしまうのです。

子どもは、次第に「ご褒美なしでは勉強したくない」と考えるようになり、ご褒美をもらわなくては勉強へのやる気を出すことができなくなってしまいます。

詳しくは後述しますが、ご褒美が逆効果になってしまうこの現象は、「アンダーマイニング効果」と呼ばれるものです。

ご褒美のタイミングを誤ると、ご褒美だけが勉強の目的になり、ご褒美をもらったらすぐにやる気を失ってしまう悪循環に陥りかねません。
ご褒美をあげるタイミングには、充分注意しましょう。

ポイント④ご褒美の内容は子どもと一緒に決める

「よかれと思って用意したご褒美が、子どもに不評だった」という経験はありませんか?

せっかく頑張ったのに、あまり欲しくない物をもらったのでは、次につながるモチベーションは生まれませんよね。

ご褒美で子どものやる気を引き出すには、普段から子どもの様子をよく観察し、子どもが本当に求めているものをあげることが重要です。
ご褒美の内容は、できる限り子どもと一緒に決めましょう。

ポイント①でも述べた通り、「物」だけではなく「経験」も立派なご褒美です。
ですから、ご褒美を決める際には、「欲しいものは何?」と聞くのではなく、「今いちばん興味があることは何?」と聞いてみると良いでしょう。

ポイント⑤ご褒美がなくても頑張れる状態をめざす

何か目標を達成するたびにご褒美をあげ続けていると、「ご褒美がないと頑張れない」大人になってしまいます。
社会に出たら、自分の努力に対していつでもご褒美をもらえる、なんてことはありませんよね。

ご褒美をあげる理由は、あくまで子どもの勉強へのやる気を引き出すこと。
勉強を習慣化できたのであれば、ご褒美は必要ありません。

最終的には、「ご褒美がなくても頑張れる」状態をめざすことが大切です

しかし、突然スッパリとご褒美がもらえなくなると、子どもは不満を感じて勉強へのやる気を失ってしまいます。
ご褒美の頻度を少しずつ減らすとともに、子どもの努力を頻繁に褒めるなどして、モチベーションをキープしましょう。

ご褒美が逆効果になる「アンダーマイニング効果」

アンダーマイニング効果とは、「ご褒美をあげることで、逆にモチベーションが下がってしまう」現象のこと。
なぜ、このような逆効果が発生してしまうのでしょうか?

ここからは、アンダーマイニング効果の仕組みや、その発生理由についてご説明します。

アンダーマイニング効果とは

アンダーマイニング効果とは、内発的動機づけに基づく行為に対して、報酬を与えるなどの外発的動機づけを行うことによって、モチベーションが低減することを意味する心理学用語です。

やりがいや好奇心といった内発的動機付けを原動力として行動していたところに、評価やご褒美などの外発的動機づけが行われると、次第に行動の目的が外発的動機づけへとシフトしていきます。
結果として、報酬をもらえない状態ではやる気になれず、モチベーションが低下してしまうのです。

ポイント③で、ご褒美のタイミングを誤ったことによって子どもの勉強の目的が「努力が実ることの喜び」から「ご褒美をもらうこと」へとシフトし、結果としてモチベーションが低下してしまう例をご紹介しました。

これを先述した「アンダーマイニング効果」の説明に当てはめると、「努力が実ることの喜び」が内発的動機づけ、「ご褒美をもらうこと」が外発的動機づけに当たります。

発生理由①勉強の目的が変わってしまう

内発的動機づけに基づく行為は、本来、その動機付けが失われない限りは継続することができます。

しかしながら、お金や物などの物理的な報酬を渡されると、人はどうしてもその喜びを求めるようになります。

初めは使命感ややりがいに基づいて行動していたとしても、ひとたびその行動に対して報酬が与えられると、内発的動機が外発的動機へとすり替わってしまうのです。

「報酬があった方が、モチベーションが上がるのではないか」と思われた方もいらっしゃるかもしれませんね。

しかし、ある行為に対して報酬をもらい続けるうちに、報酬なしでは頑張れない状態になり、さらには報酬をもらった途端にやる気をなくしてしまうことは、容易に想像がつくでしょう。

この悪循環が続くことで、次第にモチベーションは低下していきます。

発生理由②「やらされている」と感じる

人間は、元来「自発的に行動したい」という欲求を持っています。
そのため、内発的動機づけに基づいて自発的に行動することができます。

しかしながら、行動の目的が他人からの評価や報酬へと変わると、自己決定感が低下し、「やらされている」という感覚に陥ってしまいます。

元々は自発的に「やりたい」と思っていたことでも、「やらされている」と思い続けるうちに、やる気が損なわれてしまうのです。

褒めて伸ばす「エンハンシング効果」

ここまで解説してきた「アンダーマイニング効果」に対して、「エンハンシング効果」という概念があります。

「エンハンシング効果」とは、言語的な外発的動機づけによって、内発的動機づけが高まり、モチベーションが上がる心理的効果のこと。

他人から褒められ賞賛されることによって活力がみなぎり、モチベーションを上げることができるのです。

行動を褒めて自信につなげる

エンハンシング効果は、対象の才能や能力ではなく行動を褒めることによって、対象に自信をつけさせ、行動を促す効果です。

才能や結果ではなく、結果を出すまでの過程を褒められることで、「認められた」という自信を得ることができます。
さらに、自信がつくことによって、高いモチベーションを保って行動することができるようになります。

その結果、やりがいや好奇心、向上心といった内発的動機づけがさらに高まるのです。

報酬や見返りを必要としない

エンハンシング効果では、行動自体から得られる満足感や、強い探究心といった要素が行動の動機になります。

これらは、いずれも見返りを必要としない内発的なモチベーションです。

定期的に褒めてあげることによって、報酬や見返りがなくともモチベーションを維持し続けることができる、前向きな態度を養うことができるのです。

信頼している相手から褒められると効果アップ

たとえ相手が誰であっても、自分の行動を認められ、褒められるのは嬉しいものです。
特に、自分が信頼している相手から評価されることによって、より高いエンハンシング効果を得られることが明らかになっています。

小学生の子どもであれば、最も長い時間を一緒に過ごしているおうちの方が、「信頼している相手」にあたるでしょう。
子どもの行動をよく観察し、些細なことでも積極的に褒めてあげられると良いですね。

アンダーマイニング効果を防ぐために

ご褒美のタイミングを誤り、子どもにアンダーマイニング効果を起こしてしまうと、モチベーションの低下につながります。

そこで、アンダーマイニング効果を防ぐために効果的な対策をご紹介します。

子どもに伝わるように褒める

エンハンシング効果は、子どもの行動を褒めることによって発生します。

この時、褒める感情が子どもにしっかり伝わらないと、効果を発揮することはできません。

子どもは、大人が思っている以上に鋭敏に相手の気持ちを感じ取っています。
気持ちのこもらない褒め方をしていては、子どもの信頼を損ない、逆効果になってしまうことも。

特に、人前でわが子を心から褒めることには、気恥ずかしさを覚える方も多いでしょう。

しかし、そこで「すごいね!」「えらいね!」と言葉に出して褒めてあげることで、子どもは自信を身につけていきます。
素直に子どもを褒めてあげましょう。

人前で褒める

エンハンシング効果は、人前で褒めることによっても高まります。
子どもを褒める際には、なるべく人前で褒めるよう心がけましょう。

身近な存在であれば、家族や親戚でも構いません。
なるべく大勢の前で褒めることで、子どもの自尊心を高めることができます。

誰しも一度は、「人前で怒られて普段よりも落ち込んだ」という経験があるのではないでしょうか。

それと同様に、人前で褒められることによって、一対一の場で褒められるよりもいっそう、「褒められた嬉しさ」が印象に残るものなのです。

やる気がある子どもには「ご褒美」より「褒め言葉」を

やる気のない子どもに対して、物やお小遣いといったご褒美をあげることは有効かもしれません。
しかし、ある程度やる気がある子どもに対しては、物ではなく褒め言葉で行動を評価してあげましょう。

本記事で解説してきた通り、やる気がある子どもに対して物やお金といった即物的なご褒美を与えることは、アンダーマイニング効果をもたらすNG行動です。

褒め言葉で行動を評価することによって、子どもの自己決定感や達成感の低下を防ぎ、内発的動機づけを高めることができます。

 

「行動を強要させられている」と感じさせない

アンダーマイニング効果の提唱者であるアメリカの心理学者、リチャード・ド・シャーム氏によると、人間は「行動を他者から強制されている」と感じた時に、モチベーションの低下を起こすことが明らかにされています。

「人間は元来、好奇心や探究心を持ち、活動的で創造的な存在である」ということは、かれの提唱する自己決定理論における大前提です。

人間は本質的に、「他人から強要されている」という状況を嫌う傾向にあります。
したがって、子どもが「勉強を強要させられている」と感じないよう、接し方には十分注意しましょう。

 

お金をご褒美にしない

子どもがテストで良い結果を出した時に、ご褒美としてお小遣いをあげているご家庭は少なくないでしょう。

しかし、子どもの将来を思うならば、お金に関するご褒美は避けるのがベターです。

勉強のご褒美としてお小遣いを与えていると、「勉強=お金をもらってするもの」という間違ったイメージを植え付けてしまいます。金銭感覚を麻痺させることにもつながりかねません。

ご褒美をあげる目的は、あくまで、勉強に意欲的に取り組んでもらうこと。
「お金のために勉強を頑張る」という態度は、正しいものではありませんよね。

子どもにご褒美としてお小遣いをリクエストされても必ず断り、他のご褒美を提案しましょう。

ご褒美にメリハリをつける

ご褒美の効果を高めるには、メリハリをつけてご褒美をあげることが重要です。

たとえば、「ゲームで遊べる時間」をご褒美に設定するとしましょう。

この場合に、「今度のテストで○点を取ったら、今後は毎日のゲームの時間を○分伸ばしていいよ」というのは、効果的なご褒美のあげ方とは言えません。

初めの一回は効果的かもしれませんが、次第に、ゲームで遊べる時間が以前より長い状態(=ご褒美をもらっている状態)が当たり前になってしまいます。

かわりに、「○分以上勉強した日は、ゲームの時間を○分増やしてもよい」など、その日で完結するご褒美を設定しましょう。

すると、子どもはゲームで遊びたい気持ちをバネに、毎日勉強に取り組みます。
そんな習慣を積み重ねるうちに、勉強をすることが当たり前になっていくはずです。

長期的な目標にチャレンジさせる

ご褒美を活用して勉強の習慣がある程度身についたら、次は長期的な目標を立てさせてみましょう。

長期的な目標達成に向けて計画的に努力する経験も、子どもの成長には欠かせない要素です。
長期的な目標の設定を通じて、目標を達成するまでの道筋を考える論理的思考力を養うこともできます。

しかしながら、いきなり厳しい目標を設定すると、達成した直後に燃え尽き症候群になってしまうケースもありますので、目標の難易度には注意が必要です。

「何を目標にすれば良いか分からない……」という場合は、まずはテストの点数など、わかりやすい数値を目標にすると良いでしょう。

テストまでの日数を逆算して勉強計画を立てることで、計画性や段取り力を養うことができます。

まとめ

本記事では、子どものやる気を効果的に引き出すためのご褒美のあげ方や、ご褒美が逆効果になってしまう「アンダーマイニング効果」について解説しました。

子どものやる気を出させるために、ご褒美をあげることは有効な手段です。
しかし、タイミングを誤ると、逆に子どものやる気を損なってしまう危険もありますので、注意が必要です。

また、勉強に対してご褒美をもらうことが当たり前になると、ご褒美なしでは努力できなくなってしまいます。学習の習慣がついてきたら、徐々にご褒美の頻度を減らしていけると良いですね。

その際には、ご褒美を与える代わりに褒め言葉をかけることで、「エンハンシング効果」が期待できるでしょう。

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