シンプルな問題が多く塾ではすぐに公式を教わるので、子どもたちは「公式に当てはめるだけで簡単じゃん!」とつい思いがちです。
しかし、ここに大きな罠が。
公式の意味をイメージできないまま丸暗記した子は、この後に習う「分配算」「消去算」「3人の和差算」といった応用問題が出た途端に、手も足も出なくなってしまいます。
和差算の本質は、公式ではなく「線分図(せんぶんず)」にあります。
この記事では、和差算の基本から、つまずき原因の解消法、公式の意味が理解できる正しい線分図の書き方など、家庭学習のポイントを徹底的に解説します。
中学受験算数の「和差算」とは?

塾テキストの文章で読むと難しく感じるかもしれませんが、和差算の仕組みは驚くほどシンプルです。
「【中学受験】算数の「規則性」で公式丸暗記はNG!規則性・数列の基本5つを解説(学び相談室)」
和差算とは「たし算の答え」と「ひき算の答え」から元の数をあてるパズル
和差算の「和」とはたし算の答え(合計)のこと、「差」とはひき算の答え(違い)のことです。
つまり、和差算とは「2つの数字の、合計と違いの2つだけをヒントにして、元の2つの数字がそれぞれいくつだったかをあてるパズル」です。
例えば次のような問題。
【例】2つの数があります。足すと10、引くと2になります。この2つの数は何でしょう?
大人の頭であれば「6と4だな」とすぐにカンで当てられるかもしれません。
この、数字が大きくなったり、複雑な文章になったりしたものを、仕組みを使ってカチッと解くのが和差算です。
なぜ和差算が、中学受験算数の「すべての文章題の土台」と言われるのか?
中学受験の算数では、これから「分配算」「消去算」「年齢算」「やりとり算」など、数多くの文章題(特殊算)を習うことになります。
実は、これらの難しい文章題の多くは、「問題を整理して解き進めていくと、最終的に和差算の形にたどり着く」ように作られています。
つまり、最初の段階で和差算を「図を描いて、仕組みから深く理解しておくこと」は、今後の受験算数全体の習得に大きくかかわるのです。
和差でつまずく原因3つ
一見簡単そうな和差算ですが、塾の宿題やテストで子どもがつまずいてしまう原因は主に3つあります。
原因①:公式の「形」だけを丸暗記している
多くの塾では、和差算を習うとすぐに次の2つの公式を教えます。
- (和 + 差)÷ 2 = 大きい方の数
- (和 - 差)÷ 2 = 小さい方の数
子どもたちはこの形だけを暗記し、問題文に出てきた数字をそのまま当てはめようとします。
しかし、「なぜ足して2で割るのか」「なぜ引いて2で割るのか」という仕組みをビジュアルで理解していないため、公式の「+」と「-」をどっちがどっちだっけ?と度忘れしたり、登場人物が3人に増えただけで公式が使えなくなってパニックを起こしたりします。
原因②:頭の中で計算しようとする=手を動かさない
算数が苦手な子ほど、問題文をじっと見つめたまま頭の中だけで処理しようとします。
和差算は数字がシンプルであるため、なおさら「図を描くのが面倒くさい、頭の中でできる」とサボりがちです。
これは、規則性や場合の数でも同様です。
頭の中だけでやろうとする子は、問題が少し長くなったり、条件が複雑になったりしたときに情報の整理が追いつかなくなり、ミスを連発してしまいます。
原因③:線分図の書き方が雑
塾で「図を描きなさい」と言われて描いてはいるものの、つまずいてしまうパターンです。
フリーハンドで適当に描いた結果、2本の線の「左端」がズレていたり、数値が大きい方の線を短く描いてしまったり、差の書き込みがゴチャゴチャしていたりします。
図は「自分の頭を整理するための道具」です。
その道具が乱れていると、図を見ながら立式するときに自分自身で勘違いを引き起こす原因になります。
和差算における「線分図」の正しい書き方
和差算で最も大切なのが「線分図」を正しく書くことです。
家庭学習の際は、まず次の3つのポイントを押さえて丁寧に正確に書くことを心がけてください。
2本の線の「左端」を綺麗に揃えて書く
まずは登場人物(または大きい数と小さい数)の名前を縦に並べて書きます。
そして、それぞれの量を表す横線を引くのですが、このとき「左端のスタート位置を、縦にピシッと綺麗に揃えて書く」のが最大の鉄則です。
ここが揃っていないと、長さの比較ができなくなります。
当然、大きい方の線は長く、小さい方の線は短く引かせます。
ステップ②:長い方と短い方の「差」を、右側にハッキリ書き込む
2本の線を引くと、長い方の線が右側にハミ出しますよね。
この「ハミ出している部分」の真下に点線を下ろし、そこが「差(違い)」であることを矢印と数字で書き込みます。
このとき、短い方の線の右端と、長い方の線の途中の位置が綺麗に対応していることを視覚的に意識させることがポイントです。
ステップ③:「全体(和)」を中括弧( })で大きく囲む
最後に、2本の線の長さをすべて合わせた合計が「和」であることを示します。
2本の線の右側に大きく縦の中括弧( } )を書き、そこに「全体の合計の数字」を書き込みます。
この3ステップが揃った線分図が描ければ、和差算の問題は8割解決したも同然です。
線分図を使った解き方の基本2つ
綺麗な線分図が描けたら、いよいよ計算です。
和差算には2つのアプローチがありますが、どちらも「2本の線の長さを同じに揃えて、2で割る」という考え方は同じです。
次の例題に沿って線分図の書き方を解説します。
【例題】A君のクラスは30人です。男子は女子よりも4人多いです。男子と女子はそれぞれ何人ですか。
解き方A:【短い方(小さい方)に揃える】

長い方の線から、右側にハミ出している「差」の部分をハサミでチョキンと切り落としてしまうイメージです。
- 全体の合計(和)から、ハミ出している「差」をひき算します。 (和 - 差)
- すると、図の上には「短い方の線がピッタリ2本分」だけが残ります。
- 同じ長さのものが2本ある状態なので、2で割れば「短い方の線1本分」の長さが出ます。
(和 - 差) ÷ 2 = 小さい方の数
解き方B:【長い方(大きい方)に揃える】

今度は逆に、短い方の線に対して、足りない「差」の分だけ粘土をペタッと付け足してあげるイメージです。
- 全体の合計(和)に、足りない「差」をたし算します。 (和 + 差)
- すると、図の上には「長い方の線がピッタリ2本分」並んだ状態になります。
- 同じ長さのものが2本ある状態なので、2で割れば「長い方の線1本分」の長さが出ます。
(和 + 差) ÷ 2 = 大きい方の数
どっちで解いてもOK!「長さを揃えて2で割る」というイメージが大切
お子さんには「短い方に揃えても、長い方に揃えても、どっちの方法でも解けるんだよ」と教えてあげてください。
大切なのは公式の文字列ではなく、「飛び出たところをカットするか、足りないところを補うかして、2本の長さを同じに揃えれば、2で割ることで1本分が出る!」というビジュアルのイメージです。
これが分かっていれば、公式を忘れることなどあり得なくなります。
和差算の基本例題3つ
それでは、実際にノートに線分図を描きながら、基本例題を解いてみましょう。
基本:「2人の持っているお金」の問題
【問題】お兄さんと弟の2人が持っているお金を合わせると1200円で、お兄さんは弟よりも200円多く持っています。2人はそれぞれ何円持っていますか。
線分図のイメージ
お兄さんの線を長く、弟の線を短く書きます。左端を揃え、お兄さんのハミ出た部分に「200円」、全体の右側に「1200円」と書きます。
【解き方】
弟(短い方)の長さに揃えてみましょう。お兄さんのハミ出ている200円を切り落とします。
1200 – 200 = 1000 円 (これで弟2人分の長さになりました)
1000 ÷ 2 = 500円 (これが弟の金額です)
お兄さんは弟より200円多いので、 500 + 200 = 700円 となります。
【答え】 お兄さん:700円、弟:500円
確かめ算:700 + 500 = 1200円になり、差も 700 – 500 = 200円でピッタリですね!
標準:「2人の年齢の合計と違い」の問題
【問題】お父さんとお母さんの年齢を合わせると82歳で、お父さんはお母さんより4歳年上です。お母さんは何歳ですか。
線分図のイメージ
お父さんの線を長く、お母さんの線を短く書きます。ハミ出た部分が「4歳」、全体が「82歳」です。
【解き方】
今度はお父さん(長い方)の長さに揃えてみましょう。お母さんに4歳分を付け足します。
82 + 4 = 86歳 (これでお父さん2人分の長さになりました)
86 ÷ 2 = 43歳 (これが大きい方、つまりお父さんの年齢です)
お母さんはお父さんより4歳年下なので、 43 – 4 = 39歳 となります。
【答え】 お母さん:39歳
応用:3人の登場人物が出てくる和差算の考え方
【問題】A君、B君、C君の3人のテストの点数の合計は240点です。B君はA君より10点高く、C君はA君より20点高いです。A君の点数は何点ですか。
線分図のイメージ
登場人物が3人になっても恐れることはありません。基準になっている「一番点数が低いA君」の線を短く引き、B君はそれより少し長く(ハミ出し10)、C君はさらに長く(ハミ出し20)引きます。3本の左端を揃え、全体の合計に「240点」と書きます。
【解き方】
全員を一番短い「A君の長さ」に揃えてしまいましょう!B君のハミ出し(10点)と、C君のハミ出し(20点)を両方とも切り落とします。
240 – 10 – 20 = 210点 (これで「A君3人分」の長さが綺麗に揃いました)
3本分で210点なので、3で割り算をします。
210 ÷ 3 = 70点 (これがA君の点数です)
答え: A君 70点
ちなみにB君は 70+10=80点、C君は 70+20=90点となり、全員足すと 70+80+90=240点で大正解です。
おうちの方の声掛けにもひと工夫
お家で宿題をサポートしているとき、子どもが問題文を見たままフリーズしてしまったら、イライラせずに次のステップで声をかけてあげてください。
「大きい方の線と、小さい方の線、どっちに長さを揃えてみようか?」
この声かけをする前に、まずは「お兄さんと弟の線をノートに描いてごらん」と図を描かせます。
図が描けた状態でこの質問をすると、子どもは自然と図に目をやり、「じゃあ、飛び出たところを引いてみようかな」と、自分の意志で立式へ進むことができるようになります。
「公式はどうだった?」と聞いて頭を固くさせるよりも、図を操作させる質問が効果的です。
計算ミスで「答えが小数」になったときにハッと気づかせるヒント
和差算を解いていて、子どもが「割り切れない!小数になっちゃった!」と困ることがあります。
中学受験の和差算(特に4〜5年生の基本)では、人数や金額、年齢を扱うことが多いため、答えが小数になることは基本的にありません。
もし割り切れなかったら、「やり方は合っているよ。最初のたし算かひき算のところで、計算ミスがないかもう一回チェックしてみよう!」と伝えてください。
長さを揃えるための (和 ± 差) の計算部分でミスをしているケースがほとんどなので、すぐに自分で間違いを見つけられます。
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まとめ:和差算は図に描く練習のスタート地点
中学受験の算数における「和差算」は、文章題の基礎であり、中学受験算数で最も重要な図を描く練習のスタートです。
- 左端を揃えてきれいな線分図を描く。
- 長い方に足すか、短い方から引くかして、長さを揃えて2で割る。
- 3人に増えても、一番短い(または長い)人に全員の長さを揃えれば怖くない。
この「図を描いて視覚的に解く」という一連のステップは、和差算だけでなく、今後登場するすべての特殊算の攻略に直結します。
ノートに綺麗な線を引いて「長さを揃える快感」をお子様が掴めるよう、ぜひお家でも優しく見守りながら応援してあげてくださいね!
RISU利用者レビューでは、RISU算数をご利用いただいている保護者様の声をご紹介しています。
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