女の子は算数が苦手な子が多いという話を良く聞くのですが、本当にそうなのでしょうか
皆さんも一度は「リケジョ」という言葉を聞いたことがあると思います。
「理系女子(りけいじょし)」の略語で、理系を専攻する女子学生や女性研究者、理系の進路を目指す女子中高生のことを表しています。
ジェンダー平等の観点で言えばふさわしくない表現ではありますが、「リケジョ」がカテゴライズされているということは、「理系に進む女子がいかに特殊で珍しい存在であるか」ということを端的に表しています。
これまで多くの人は、女子学生は算数(数学)が苦手なので理系に進む数が少ないと考えていました。
しかし、カーネギーメロン大学のJessica Cantlon教授が率いる研究チームは、機能的MRI(fMRI)を用いて子供の脳の発達について調査した結果、脳の機能や数学能力に男女差はないという結論を発表しています。
ではなぜ女の子は算数(数学)が苦手だとされているのでしょうか。
性別を理由に子ども達の将来を狭めてしまうことがないように、具体的に解説していきますので、ぜひ参考にしてください。
◆女の子が算数が苦手だと思ってしまう3つの理由
人が物事を考えるとき、対極的に物事を見がちなので、おそらくは下記のような大人の思い込みが影響して女の子は算数が嫌い(苦手)だと思われてきたのでしょう。
女の子は男の子と比べて部屋でおとなしく過ごすことが好きである
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部屋では本を読んだり、絵を書いたり、お話をしたりしている
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女の子はどうやら文系分野が好きであり、得意でもある
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文系分野の対極にある算数は嫌い(苦手)であろう
ここでは女の子が算数が苦手だと思ってしまう3つの理由について解説していきましょう。
◎理系といえば男子というイメージが刷り込まれる
国語の授業では先生から「この時、作者はどう思ったのでしょうか?」といったような、明確な回答のない質問を受けます。
子ども達にとって、自分が考えていることを正確に相手に伝えることはまだまだ難しいことであり、言語能力の発達が遅れがちな男の子であればなおさらです。
一方で、算数は「1+1=2」といったように明確な答えが存在しているので回答しやすいという側面があります。
国語の授業でおとなしくなってしまった男の子にとって、算数の授業は大チャンスであり、自ずと発言する機会も増えていきます。
先生の立場としても国語の授業などでは女の子の活躍の場が多いため、算数の授業では男の子に活躍の場を与えがちになっているという傾向があるわけですね。
また、第三次産業革命以前の社会において、数学に最も関係する工学系の産業は力仕事にも密接に関係していたため、数学力という観点より体力的な観点で女性の仕事ではないと思われ、男性によって占められていました。
今の理系の分野は力仕事が必要とされているわけではありませんが、男社会が形成されているため、女性が入り込んでいくことはかなり勇気のいることでした。
このような小さなことの積み重ねが、女の子から算数(数学)を遠ざけてしまい、算数は男の子が得意だというイメージがすりこまれていったと考えられます。
◎母親が苦手だから自分も苦手でいいと考えてしまう
小学5年生になると、算数の学習内容はこれまで積み重ねてきたいくつかの要素を合わせて問題を解くことが増えてくるために、急に難しくなると言われています。
過去に学習した要素の中に1つでも苦手な要素があると、問題を解く際にその苦手な要素がネックになり、回答まで辿り着けないというケースが増えていきます。
「速さの計算」「単位の変換」「グラフの読み取り」といった、数々ある算数の要素の中で何が理解できていないのでしょうか。
それとも単純に「九九の暗記」が出来ていないのかもしれません。
算数は、ネックになっている原因を見つけて学び直すことで、苦手だという状況から脱することができます。
しかし、子どもの学習に対して当事者意識の強い母親が、算数の学習フォローをしてあげられないことに負い目を感じ、「お母さんも算数が苦手だったから仕方がないよ」と自分を言い聞かせてしまうことがあります。
しかし、親がそう思ってしまうと、その気持ちは必ず子ども達に伝わってしまいます。
子ども達が「算数が苦手でもいいんだ」と思ってしまえば、学習意欲が削がれてしまいますし、苦手意識はますます膨れ上がってしまいます。
これから長い学生生活を考えると、算数は苦手のままで良いことはありません。
教えてあげられなくても構いませんので、どこでつまづいているのかを一緒に探してあげてください。
◎なりたい職業には算数が必要ないと感じるので興味が沸かない
今どきの小学生の女の子がなりたい職業は何でしょうか?
日本FP協会が2022年3月に小学生の「将来なりたい職業」ランキングの集計結果を発表しました。
女の子のトップ10は下記の通りです。
1位:医師
2位:看護師
3位:保育士
4位:イラストレーター
5位:教師
6位:薬剤師
7位:美容師
8位:パティシエール
9位:獣医師
10位:会社員・事務員
日常生活で触れることもある上記の仕事を行うにあたって、算数(数学)の力を活用することがイメージできていないことこそが、算数は自分にとって必要ないと思わせてしまっている要因になっているようです。
しかし、本当に算数は必要ないのでしょうか。
大人であれば、医師、看護師、薬剤師、獣医師などの医療系専門職には当然算数(数学)の能力は必要だということは理解できますが、子ども達に説明するのは容易ではありません。
パティシエールや美容師などは、自分の店を持ち、経営するためには算数(数学)の知識を活用することになります。
イラストレーターにしても、今は手書きで絵を書いている人はほとんどいません。
パソコンなどのIT技術を駆使して仕事をしている人がほとんどです。
今の時代、ほとんどすべての職業の人が使用している道具があります。
それはパソコンです。これは子ども達にも理解しやすいでしょう。
学校教育ではプログラミングが必修化されました。
プログラミングには算数の力が必要であり、プログラミングは様々な分野で必要とされています。
仕事をする上で必ず必要とされるパソコンと算数の関連性を感じさせてあげることができれば、将来の自分に算数は必要ないと考える子ども達はきっと減っていくに違いありません。
◆算数を苦手だと思い込まない3つのステップ
女の子が算数が苦手であるという学術的な根拠はありませんが、歴史的な背景や、学習環境によって、女の子は算数が苦手だと思ってしまいがちだ、ということについてお伝えさせていただきました。
では次に、算数を苦手だと思いこませないために必要な3つのステップについて解説したいと思います。
◎女の子は算数が苦手という思い込みを解消する
どんな勉強であったとしても、一度や二度は必ず壁にぶつかる時がやってきます。
思ったように学習効果があがらなくて苦しい場面において、「女の子は算数(数学)が苦手でもしょうがない」という逃げ道があったらどうでしょう。
もしかしたら、親である自分達の学生時代に、その言い訳を使って逃げ出してしまった方も多いのではないでしょうか。
第三次産業革命以降の世の中は、どのような職業に就いたとしても算数(数学)的な発想と能力が問われることになります。
「女の子は算数(数学)が苦手でもしょうがない」という考え方は、もはや過去のものであり、無用の長物です。
親御さんは子ども達に絶対に言わないように心がけてください。
◎料理やお小遣いの管理などの日常生活を算数で理解する
日常生活において算数を使う場面をつくる代表例として、お小遣いの管理があげられます。
定番の手法ではありますが、算数的観点というよりは、自己管理を継続して行うという観点において、かなりハードルが高く、親にとっての負担も大きいです。
日常生活において、算数の考え方を用いているケースは意外に多く存在していますので、そんなに難しく考える必要はありません。
・100円あげるから、好きなお菓子を買ってもいいよ
・あと30分でゲームは終わりにしてね
・ケーキを作るのに砂糖を50グラム使うから計っておいて
・ピザをみんなで食べるから、皆の分を切りわけておいて
といった場面において、少しだけ算数の要素を取り入れようと心がけるところから始めてみてください。
◎算数検定など目に見える成果を出して自信をつけさせる
勉強に対してのモチベーションを維持するためには、自己評価ではなく外部からの客観的な評価を得ることはとても重要です。
自己肯定感が高まることにもつながり、何事にも積極的にチャレンジしようという気持ちが芽生えてきます。
算数検定は、受験内容のレベルに合わせて合格者には「級」が与えられる段級位制(だんきゅういせい)を採用しています。
7級に合格して合格証をもらった、といった日々の努力の成果が目に見える形になって残るため、次にチャレンジしようという意欲へとつながります。
合格証はぜひ部屋に飾ってあげてください。
◆まとめ
2018年度の文部科学省学校基本調査をみてみると、文学部、法学部など人文・社会科学系学部だけでなく、医学部を除いたすべての理系学部でも女性の合格率が男性を上回っています。
親の世代が学生時代を過ごしたのは、もう20年以上前です。
その頃の常識は今や非常識であることは多々あります。
例えば文系学生に人気の就職先であった銀行などは大幅に採用数を減らし、代わりに理系学生の採用に力を入れています。
子ども達は新しい時代を生きようとしています。
過去の常識にとらわれて、可能性を潰してしまわないように、親としては心がけていきたいものです。