小学生の子どもが繰り下がりのある引き算が苦手です。家庭でもできる分かりやすい教え方はありますか？

繰り下がりのある引き算ができない原因とは？

まずは、繰り下がりのある引き算でつまずく原因を深掘りしていきます。

引き算を表す言葉が分からない

算数では、言葉からイメージを描き、式にあてはめます。
「引き算＝数が減る」というイメージをつかめるようにするには、引き算を表す言葉に慣れることがポイントです。

たとえば次のような文章題を見てみましょう。

・みかんが5個あります。2個食べました。残りはいくつですか？
・Aチームは2点、Bチームは6点でした。どちらがどれだけ多いですか？

「残り」や「差」を問うこれらの文章題に頭を悩ませているお子さんは多いのではないでしょうか？

実は引き算には大きく5つの意味があります。

①「残りはいくつ？」を求める引き算（求残）
②「どちらがどれだけ多い？」を求める引き算（求差）
③「7番目の人の1つ前は何番目？」といった順序数を含む引き算
④大小の差がわかっていて、小さい方の数を求める引き算（求小）
⑤「単位が異なる数量の差」を求める引き算（例：「10mのリボンから3m50cm切ったら、残りは？）

繰り下がり以前に引き算を表すいろいろな言葉を理解できないと、繰り下がりのある引き算でつまずく原因になります。

10のまとまりを理解していない

1年生の算数では以下の数の概念を学習します。

・個数を比べる
・個数や順番を数える
・数の大小
・一つの数を他の数の和や差とみる（5は1と4など）
・2位数（二けたの数）の表し方
・10を単位とした数の見方

特に10の単位、10のまとまりの学習は、繰り下がりの引き算にとても重要です。
繰り上がり・繰り下がりといった1年生の算数はこの先の算数学習の土台になります。

繰上りのある足し算にも不安がある場合、こちらの記事もお読みください。
「繰り上がりのある足し算が苦手な子。分かりやすい教え方が知りたい（学び相談室）」

一年生の算数は四則計算の基礎。
足し算・引き算につまずいているお子さんは、10のまとまりをしっかり覚えましょう。

繰り下がりのイメージができない

計算がどのような場合に繰り下がりになりますか？

例えば、12-3の引き算では一の位の2から3は引けず、このような場合に繰り下がりが必要になります。
繰り下がりが必要か否かを判断できるようにするためには、1年生で学習する「数の大小」や「10を分解する考え方」を活用します。

繰り下がりの意味をきちんと説明できるお子さんは多くありません。
また繰り下がりの筆算ができていても、なんとなく計算の方法だけを理解していて、繰り下がりの仕組みについては充分に理解していないお子さんもいます。

これも数の大小や10のまとまりをイメージできていないことが原因です。

繰り下がりのある引き算ができるようになるための4ステップ

ここからは、家庭でもできる繰り下がりのある引き算の教え方について解説します。

ステップ1：10のまとまりを確認する

繰り下がりのある引き算に重要な学習は10のまとまりの学習です。

足すと10になる、1＋9、2＋8、3＋7・・・の9通りの足し算は必ずマスターしましょう。
繰り下がりのある引き算にも役立ちます。

また、繰り上がりのある足し算で使う「さくらんぼ計算」は、繰り下がりのある引き算でも使います。
さくらんぼ計算の考え方も復習をしておくと、繰り下がりのある引き算を学習する際に考えやすくなります。

ステップ2：引き算で使われる言葉に慣れる

まずは引き算の意味をお子さんと確認しましょう。

例えば、「みかんが5個あります。2個食べました。残りはいくつですか？」という問題を積み木やブロック、市販の100玉そろばんなどを使い、式と答えをイメージできるように教えます。

「Aチームは2点、Bチームは6点でした。どちらがどれだけ多いですか？」という少し抽象的な問題も、物を使って視覚的に理解できるようにするとよいです。

そして「引き算の言葉」にも慣れていきましょう。

・引く
・減る
・差し引く
・取り除く
・残りは
・なくなる
・少なくなる
・差は

これらの引き算を示す言葉に注目する癖をつけると、文章題のイメージができ正しく式を立て答えを導き出せるようになります。

イメージや言葉に注目して、引き算に対する小さな障壁を取り除くだけで、繰り下がりのある引き算のハードルはグッと下がってきますよ。

ステップ3：繰り下がりがある筆算（ひっ算）を繰り返し練習する

最後に、繰り下がりのある筆算を教えます。
繰り下がりのある引き算には減加法と減減法がありますが、筆算では減加法がもとになります。
（減加法と減減法については下で解説しています）

繰り下がりの仕組みが理解できてきたら、少しずつ桁数を増やし、最終的に桁数が多い計算、繰り下がりが連続する計算にチャレンジしていきましょう。

計算問題を繰り返し解き、繰り上がりのある足し算ができるようになったら、文章問題に取り組みます。

ステップ4：文章問題で理解を深める

文章問題に取り組むと、お子さんが繰り下がりのある引き算を本質的に理解できているかが判断できます。

繰り下がりを理解していれば、計算ミスをしてもお子さんは答えに違和感を覚えるはずです。

他にも文章問題を解くことで身に付く力はたくさんありますので、詳しくは以下の記事を参考にしてください。
算数の文章問題が苦手な子への教え方は？文章問題でつまずく原因と教え方のコツを知りたい

繰り下がりのある引き算を教える際の注意点

繰り上がりのある引き算を教える際の注意点について解説します。

減加法と減減法

繰り下がりの引き算は2つの方法があります。
それぞれにメリットデメリットがありますが、どちらか一方の偏らずマスターすることをおすすめします。

一つは「減加法」です。
12－7の計算では、（10‐7）＋2＝5という形で先に10から引いて足す方法です。

減加法のメリットは、計算しやすく、定着しやすいとされており、あらゆる問題に対して同じ方法で教えることができ、筆算では減加法が使われています。
一方で減加法のデメリットは、引き算なのに足し算が含まれるため、混乱を招く可能性がある点です。

もう一つは「減減法」と呼ばれる方法です。
12－7を減減法でやると、（12－2）－（7－2）＝5というように順に引いていく方法になります。

減減法は、足し算がある減加法に比べて、引き算の概念をより直感的に理解しやすい方法です。
ただ引かれる数の一の位に合わせて引き算を分解する必要があり、この作業を難しく感じるお子さんもいます。
しかし頭の中で数を足したり引いたりして計算しやすく工夫する癖をつけると、暗算力を高めることができます。

スモールステップで少しずつレベルアップ

複雑な内容はスモールステップで積み上げることが重要です。
繰り下がりのない簡単な引き算から少しずつ難易度を上げていき、最終的に桁の多い繰り下がりある引き算までできるようしましょう。

以下の9つのステップを参考にしてみてください。

①1桁同士の引き算　8－2
②2桁‐1桁の引き算（繰り下がりなし）18－6　34－3
③2桁‐1桁の引き算（繰り下がりあり）21－5　47－9
④2桁‐2桁の引き算（繰り下がりなし）34－23　83－31
⑤2桁‐2桁の引き算（繰り下がりあり）32－17　53－39
⑥3桁‐1桁の引き算（繰り下がりなし）177－4　208－3
⑦3桁‐1桁の引き算（繰り下がりあり）218－9　482－7
⑧3桁‐2桁の引き算（繰り下がりなし）167－32　475－64
⑨3桁‐2桁の引き算（繰り下がりあり）342－76　763－95

桁数を増やした場合、繰り下がりのない引き算から学習するとつまずきにくくなります。
繰り下がりがないだけでハードルは下がり、お子さんの心理的な負担も小さくなります。
繰り下がりがない引き算に慣れたら、繰り下がりのある引き算にステップアップ。

最終的には、お子さん自身の力で繰り下がりの有無を判断し、どんな計算でも対応できるようにします。

適切なタイミングで繰り下がりを復習する

繰り下がりのある引き算は、以下の学年でたびたび登場します。

・小3　3桁や4桁の引き算
・小4　小数の引き算
・小5・6　何かの差を求める際の引き算

小学校の算数は、過去に学習したことを積み上げ応用しながら新しいことを学習していくので、繰り下がりのある引き算を使う単元のたびに、繰り下がりを復習をすると効果的です。
適切なタイミングで復習をしていくことで、理解が深まっていきます。

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つまずかないように早めに対応をする

繰り下がりのある引き算につまずかないためには、前学年（特に1年生）の復習を中心に、早めに対応しましょう。

本記事を参考に、お子さんが繰り下がりの引き算のどこにつまずいているのか原因を把握し、ポイントを押さえて教えていただければと思います。

お子さんが繰り下がりの引き算を克服することを願っています。

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お子さんの勉強の参考になる記事がきっと見つかるかと思いますので、ぜひ一度覗いてみてくださいね。