内科検診・歯科検診・視力検査・聴力検査・知能検査を行います。
「うちの子はちゃんと検査を受けられるだろうか」
「検査にひっかかったら小学校生活に差し支えるのでは?」
など、不安になる方もいらっしゃるかもしれません。
そこで本記事では、
・就学前検診の概要と流れ
・知能検査など検査の具体的な内容
・検査にひっかかった場合の対処
について詳しく解説しました。
これからお子さんの小学校入学を控えた方は、ぜひ参考にしてください。
就学前検診の概要
就学前検診とは、小学校入学前の年長さんが受ける集団検診です。
9月から10月ごろに、住民票のある自治体の教育委員会から「就学時健康診断通知書」が届き、10月~12月にかけて実施されます。
まずは就学前検診の目的や、事前準備のポイントを確認しましょう。
就学前検診の目的
就学前検診の目的は、入学前の子どもの健康状態や特性を確認して、スムーズに小学校生活を送れるようにすることです。
身体面の観察のほか、発達状況や行動の特性などを観察し、必要であれば入学前の治療やサポート、就学相談につなげます。
就学前検診は、入学予定の小学校で実施されるため、進学先の小学校内を見れたり、先生方の雰囲気が分かるいい機会です。
学校によっては高学年の児童が検診に付き添うといった取り組みをしており、親子ともに就学意識を高める狙いもありますよ。
就学前検診の事前準備と持ち物
事前準備では、まず「就学時健康診断通知書」の内容をよく読み、日時や記入が必要な書類などを確認しておきましょう。
書類は母子手帳を見ながら、成育歴や予防接種歴を記載します。
また、子どもに小学校で健康診断をすることや、検査内容を伝えておきましょう。
聴力検査や知能検査など、慣れていない検査を初めての場所で、知らない子たちと実施するため、緊張する子も珍しくありません。
「元気に小学校にいけるように検査するんだよ」
「ドキドキするけど、みんなおなじ気持ちだから大丈夫だよ」
など、子どもが安心できるように声をかけてみましょう。
就学前検診が終わったらアイスを食べるなど、ご褒美を用意してもいいですね。
当日の持ち物はこちらです。
- 就学時健康診断通知書(受付票)
- 問診票や事前調査票
- 母子手帳
- 筆記用具
- 上履き(子ども用)と携帯スリッパ(保護者用)
- 靴袋(ビニール袋やナイロン袋など外靴が入るもの)
- 飲み物
母子手帳自体は必要ない場合もありますが、予防接種歴や成育歴の記入に不備があった場合、すぐ確認できるので持っておくと安心です。
また、学校によっては上履きやスリッパに履き替えたあと、外靴を携帯するよう言われるため、靴が入るサイズの袋を持っておきましょう。
子どもの服装は、検査を受けやすい、上下が分かれて着替えやすい洋服にします。
保護者の服装はとくに指定はなく、普段着の方や仕事を早退してきたオフィスカジュアルの方などさまざまです。
ただし、検診結果や相談事によっては校長先生との面談があるため、服装に困ったらきれいめのカジュアルを着ていくと安心です。
就学前検診は1時間半~2時間ほどかかるため、水筒など飲み物も持参しましょう。
就学前検診の検査内容
就学前検診では内科検診・歯科検診・視力検査・聴力検査・知能検査をおこないます。
検査内容を詳しく説明するので参考にしてください。
内科検診の内容
内科検診では視診・聴診・触診を通して以下の項目を確認します。
- 予防接種歴、アレルギーや持病など既往歴
- 栄養状態
- 貧血の有無
- 脊柱・胸郭異常
- 心雑音や不整脈
- 皮膚の状態
脊柱が左右に曲がっている「側わん症」があると、運動機能や肺の成長に影響するため、前屈させて脊柱と胸郭のチェックもします。
子どもには、服を脱ぐ可能性があることや、医師が聴診器を体に当てたり、必要なときは触ったりすることを子どもに伝えておきましょう。
視力検査
視力検査は片目を隠し、C字の切れ目がどこにあるか指さしで答えます。
結果はABCDで評価され、B以下(視力1.0未満)であれば眼科の受診を勧告されます。
A | B | C | D | |
視力結果 | 1.0以上 | 0.9~0.7 | 0.6~0.3 | 0.3未満 |
学校での見え方 | 影響なし | たまに見えにくい | 後ろの席だと黒板が見えない | 前方の席でも黒板が見えない |
事後措置 | 受診の必要なし | 眼科受診を勧められる |
視力がCやDであれば、学校での授業に支障をきたすため、早めに眼科を受診し治療しましょう。
視力Bではメガネは必要なく学校生活にさほど影響しないので、受診する必要があるか迷うかもしれません。
しかし、近視や遠視・乱視などの目の異常を一度診て貰っておくと安心です。
聴力検査
聴力は言語発達や学習能力に重要なため、就学前検診で必ず検査をします。
静かな部屋で、ヘッドフォンのようなものを装着し、音が聞こえたらボタンを押して聴力を測ります。
3歳児検診では、ささやき声で聴力のチェックをおこなっているため、ヘッドフォンやボタンなど機器を使用する聴力検査は、入学前の子どもにとって初めての検査方法です。
静かな部屋でヘッドフォンをすると、緊張したり不安になりやすいため、どんな検査なのかあらかじめ伝えておきましょう。
聴力検査に問題があっても、かならずしも難聴とはかぎりません。
耳垢が詰まっている・中耳炎などの病気で聞こえにくくなっている・検査に集中できていなかったなど、いろんな理由があります。
歯科検診の内容
虫歯や嚙み合わせは発語や学校給食に影響するため、以下のような項目を歯科検診でチェックします。
- 虫歯
- 噛み合わせの異常
- 歯肉炎や歯石
- 過剰歯
就学時検診をうける5歳から6歳は、ジュースや甘いおやつの量が増える年齢でもありますよね。
虫歯は黒いイメージですが、COと呼ばれる初期虫歯は白く濁った状態のため、普段の歯磨きでは気付かず、歯科検診で見つかることがあります。
黒くなっている虫歯は自然治癒せず、入学までにさらにひどくなってしまうため、歯科検診でしっかりチェックしてもらいましょう。
そのほか、発語や摂食に影響が出る噛み合わせの異常や、正しいブラッシング指導が必要な歯肉炎・その後の歯並びに影響する過剰歯の有無など、口腔内全体を診察します。
知能検査の内容
知能検査は、発達障害や知的障害の可能性のある子どもを、適切な支援や医療機関へつなげるために実施します。
知能をみる方法はいくつかあり、検査方法は限定されていません。
自治体や小学校によって検査方法が違いますが、以下のような実施例があります。
- 数人の集団面接で実施する
- えんぴつで丸をするなど筆記型のテストをする
面接型では「名前を教えてください」「〇〇な人は手を挙げてください」といった簡単な質問をします。
面接をする先生は、知能のほか、受け答えや行動から言語発達や情緒面なども観察しています。
筆記型の知能検査の場合は、いくつかあるイラストのうち仲間外れのものに丸をしたり、同じ数同士を線で結ぶといった問題で、字は書かせません。
難易度としては、4歳くらいの発達をクリアしているかを見ています。
知能検査は、できなければ不合格というものではありません。
新しい場所が苦手で受け答えできなかったり、何か嫌なことがあって気持ちが立て直せなかったなど、心理的な要素で結果が正しく出ない可能性も考えられます。
子どもにどのようなサポートが必要なのか、考えるきっかけとなるものなので、あまり気負わずに受けましょう。
就学前検診でひっかかる子と対処法
保護者の方は「検診でひっかかったらどうしよう」と不安ですよね。
ひっかかりやすい項目と、ひっかかった場合の対処法について解説するので参考にしてください。
虫歯や視力・聴力でひっかかった場合:医療機関へ
まずひっかかりやすいのは歯科検診と視力検査です。
虫歯がある場合は歯医者、視力低下が見られる場合は眼科、聴力検査でひっかかった場合は耳鼻科への受診を勧告されます。
検診後に、治療勧告書や検診内容の結果が書かれた用紙が自宅に送付されるため、案内にしたがって医療機関にかかりましょう。
知能検査や行動面でひっかかった場合:保健センターへ
就学前検診でおこなう知能検査や行動の観察は簡易的なものなので、自治体の保健センターへの相談や児童精神科への受診で詳しく検査してもらいましょう。
保護者は、子どもの気になる行動が「発達障害などの特性によるもの」だと理解できると、必要以上に怒らずにすみます。
子どもの自己肯定感の低下や二次障害の防止にもつながりますよ。
言語面でひっかかった場合:ことばの教室へ
吃音がある・サ行が言えないなどの構音障害が見られた場合は、自治体の保健センターに相談し、ことばの教室でサポートしてもらいます。
ことばの教室では、言語聴覚士(ST)さんが言語発達の確認や言語療法をおこなってくれます。
言葉がうまく人に伝わらないと、子どもは自信を失いやすいもの。
言語でひっかかった場合は、早めにことばの教室を利用しましょう。
就学前検診でショックを受けたら
就学前検診でひっかかると、日頃の育児や子ども自身を否定された気持ちになり、ショックを受けてしまいますよね。
毎日歯磨きをがんばっていたのに虫歯があった・問題ないと思っていたのに視力が低かった・大人しく座っている子が多いのにうちの子は騒いでしまったなど、多くの保護者が経験します。
しかし、就学前検診は子どもや育児を否定するものではありません。
子どもの症状や特性に気付き、入学後に困らないようサポートするために指摘をされます。
あまり深刻になりすぎず、まずは対処法に沿って対応していきましょう。
就学前検診でよくある質問
小学校入学を見据えた就学前検診にはさまざまな不安があるかと思います。
就学前検診でよくある質問にお答えするので、参考にしてください。
就学前健診の法的根拠は?義務ですか?
就学前検診は「学校保健安全法」という法律に基づいて実施されます。
自治体の教育委員会には、就学前検診を実施する義務がありますが、保護者や子どもに受ける義務はありません。
しかし学校保健安全法は、子ども達が健康で、安全に学校生活を送れるように制定されたもの。
子どもが抱える問題を早期発見し、適切にサポートする目的があるので、なるべく就学前検診を受けるようにしてください。
就学前検診に行けなかったら、どうしたらいいですか?
日程の都合や、体調不良で欠席する場合は、必ず受ける予定の小学校に連絡してください。
指定された就学前検診に行けない場合は、自治体の教育委員会によって対応が異なります。
- そのまま未実施とする
- 日程が合う別の学校で受ける
- 近隣の病院を個別に受診する
子どもに就学前検診を受ける義務はないため、そのまま未実施とする地域もあれば、近くの病院で健康診断を受けるよう指示する地域もあります。
お住まいの教育委員会のホームページで確認してください。
個別に病院を受診する場合は、歯科・内科・眼科・耳鼻科とそれぞれの病院をまわって健康診断を受けなくてはいけません。
また、自費診療となりお金がかかるため注意しましょう。
就学前検診はどのくらい時間がかかりますか?
受付から帰宅まで、1時間半~2時間ほどかかります。
検査自体はそれぞれ5分~15分ほどですが、待ち時間や面接などを含めると最短でも1時間以上はかかると思っておきましょう。
保護者は子どもの検診が終わるまで、体育館などで待機します。
待っている間、小学校の説明や校長先生の話がありますが、暇つぶしができるように本などを持参するといいでしょう。
就学前検診で発達のグレーゾーンはひっかかる?
発達障害の特性がありながら、確定診断までには至らないグレーゾーンの子の場合、学校生活を送るうえで困りそうであれば検診にひっかかる可能性があります。
しかし、ひっかかるのは決して悪いことではありません。
その子に合わせた対応を学校や相談機関とともに考えたり、あらかじめ子どもの特性を学校側に知っておいてもらうことで、問題行動やいじめ、精神的な二次障害を防げます。
グレーゾーンであっても、ご家庭でうまく対応できていたり、コミュニケーション能力が高いと、就学前検診ではひっかからない子どもも多いです。
就学前検診でひっかからなくても、すでにグレーゾーンであると医師から指摘されている場合は、問診票などにあらかじめ記載しておきましょう。
先生方が子どもの特性を把握できると、入学後トラブルがないかなど注意して見てもらえます。
就学前検診の内容や、ひっかかった場合の対処まとめ
ここまで、就学前検診の概要や詳しい検査内容、ひっかかった場合の対応について解説しました。
子どもにとって、自分の体を触られたり見られたり、慣れない検査をするのは不安です。
どういった検査をするのか事前に話し合い、安心して就学前検診当日を迎えましょう。
また、保護者の方は検査にひっかかったらどうしようと不安になっているのではないでしょうか。
就学前検診はテストを受ける場ではなく、子どもが健康かつ安心して学校へ通うために実施する健康診断です。
あまり気負わず、子どもの学校生活が良いスタートを切れるように、就学前検診でお子さんの状況を観察してもらいましょう!
小学校入学準備や入学前の勉強については以下の記事で詳しく解説しています。
「小学校入学前の準備は何をすればいい?スケジュール・揃えるもの・勉強について知りたい」
スムーズな小学校生活スタートには無理のない先取り学習がおすすめです。
こちらのページで詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
参考文献:
「知的障害と発達障害の子どもたち」本田秀夫著
「就学時の健康診断マニュアル平成29年度改訂版」日本学校保健会